言語ペアと翻訳単価の相関性について思うこと
こんにゃくです。
今日は、翻訳言語ペア間の価格差について、思うことを話します。
多くの翻訳会社は、日⇔英翻訳だけでなく、他の言語の翻訳も請け負います。
中国語やスペイン語などのメジャー言語のみの会社から、ビルマ語やブルガリア語といったマイナー言語まで見積可能な会社等、カバー範囲は様々ですが、 基本的に英語を原語とすることが一般的です。
ところで、それぞれの言語の翻訳にかかる金額って、どのようになっているのでしょうか?
もちろん一律ではありません。
言語によって価格は異なり、どの翻訳会社も言語ごとの価格表を必ず持っています。
職務上、数十社以上の単価表を目にしてきましたが、おおよそ以下のような法則のもと、価格が設定されています。
①話者数に比例
②現地物価に比例
③特殊文字系(文字流れが反対とか)は割り増し
例えば、話者数が圧倒的に多くて、現地物価も高くない中国語あたりが、最安の価格帯になるケースが多いです。
逆に、話者数が少ないし、現地物価も高いため、最高価格帯にしばしば設定されるのが北欧系の言語です。フィンランド語とか、そのあたりですね。
ヒンディー語なんかは、話者数多いし、現地物価も安いので、セオリーでは安くなる言語のはずなんですが、特殊文字なので扱い諸々が厄介であり、手間賃で割り増しされて結構高めになっていることが多いです。(インドに直発注すると驚くほど安いというのはここだけの話・・・。)
と、ここまで一般論の話。ここからは私の意見。
このように、ある意味市場原理的に、単価が決まるのは極めてまっとうであり、異論はありません。だからこそ、どの会社も似たような価格設定をしているのだと思います。
ただ、翻訳を実際に扱っている現場の身としては、もう一点、導入検討して欲しいと感じるファクターがあるのです。
それは、「実際の翻訳の難易度」という観点です。
「言語間のとび幅」ともいうことができるかもしれません。
英語を原語に翻訳するのであれば、英語と近い欧州の言語、とりわけゲルマン系の言語は、翻訳負荷は比較的低いのではないかと感じるのです。
素人的な発想です。すみません。ただ、これは、あくまで比較の話です。
文字も語源も文構造も英語と全く異なる日本語は、欧州言語と比べて翻訳負荷高いでしょ!という事実には、異論の余地はないはずです。
そして、「言語間のとび幅」が大きい言語ペア翻訳に対しては、その分の割増幅があって然るべきなんて思う次第です。
事実、機械翻訳導入の実用化レベルが高いのは、ダントツで欧州です。
アジアでも、研究は進んでいますが、欧州に追いつけるレベルではありません。やはり、とび幅が大きいために、言語そのものとして難しいのです。
先日、トルコ人の業界関係者と話をする機会がありましたが、「機械翻訳なんてトルコ語でできるわけねーよ!」ってバッサリ切り捨てられました。トルコ語もまた、日本語と同じように、英語とのとび幅が大きな言語です。
要は、英⇔日翻訳って、他の言語と比べて難しいんだから、単価もう少し上がってもいいんじゃないのー!? と海外クライアントに言いたい所から始まったんですがね。
ただ、機械翻訳の精度が向上して市場にどんどん食い込んでいった場合、その過渡期には、機械翻訳でうまくいきやすい言語ペアとそうでない言語ペアの間に、負荷差が発生します。
そんな時代になった時、これまでの単価の考え方のままでいると、非常に危険です。
機械翻訳を取り込む事でよりイージーになるはずの欧州系言語で高い単価がキープされ、機械翻訳適用が難しいために人手翻訳を続けざるを得ずこれまで変わらないコストがかかっているのに単価見直しがされない非欧州系言語。
そんな未来が見えなくもないのです。
どこかの転換点で正しく主張をして、うまく立ち回らないと圧倒的に損をするでしょう。